勉強会 その1

もっと鎮魂の文化が必要ではないのか…
震災から5年目に入とうとしている平成26年12月、私たちは、震災からのさまざまな想いを経て、再びまちづくりの活動に取り組むことにしました。最初の取り組みとして挙がったのが数多くの人々の死を受け止め、悼むことからはじめたいという声でした。根底には、今回の地震で「鎮魂の文化がもっともっと必要なのではないか」という思いがあります。震災の年を一つの完全な節目と考えると、その次にあるのは「再生」です。厳かに閉じて、そこから新しい命が再生されていくための祭事。今回の企画を私たちは、再生のための祭事と考えます。

新しい伝統文化の胎動から誕生を福島から発信

数多くの同じ福島・東北人の命が失われたというゆるぎのない事実について、深い哀悼を捧げることからはじめたい」「失われた魂に心を捧げることを中心に置きながら、これまでの歴史・伝統と未来について考え、震災の意味から思案する「鎮魂と再生」の新しい伝統文化の胎動から誕生を、ここ福島から全国へ、そして世界へと広く発信し、未来を担う子どもたちに示したい」「震災で亡くなられた方々の怒り、無念、悲しみ。そして、今なお私たちの中でくすぶる憤り、絶望、取り残されていくような孤立感・・・。そうしたさまざまな思念を祀り、鏡のように映し出し、意識することで開放しながら、再生を確かなものにして新しい社会を作っていきたい」
実行委員の心の内に宿るやんごとなき思いが創作の原動力になっています。

私たちが神楽を創ることに挑戦していいのか…

一つだけ気がかりだったのは、市井の人が神様にささげる歌や踊りを創作することに挑戦していいのかということでした。そこで、私たちは「神楽」を勉強することからはじめました。まず、森幸彦さん(福島県立博物館学芸員・伊勢大御神宮司)にお話をお聞きしました。
今年2月には、懸田弘訓さん(県文化財保護審議会員)をお招きしてお話を伺いました。懸田先生には、福島県内に残る神楽のルーツや神楽や民俗芸能には土地の風土、歴史、文化、美意識がつまっていること、ほかにも「譲れないところがあるから基本をしっかり押さえること」「勘所を押さえて発展させていく」「鈴や笛は、魂を呼ぶ道具」「心残りを持つ魂を神楽でなぐさめ強くし、生き残った私たちを守っていただく」など、大切なことをたくさん教えていただきました。さらに「被災した人の本当の心を見抜く力に耐えうるものを」「どんなに科学が進んでも神頼み。弱さを大切にしたいね」というエールも頂戴しました。

神楽の歴史はおおらかだ

そして今年5月、福島稲荷神社を訪ねて宮司の丹治正博さんに伺った「震災で社殿を失った神楽の復活が願われている」「今こそ、ことばが大事。詩人に活躍してほしい」「1000年前の貞観地震の直後、天皇が犠牲者の慰霊のために創らせたのが京都の祇園祭。人々は、心のやわらぎをお祭りに求めた。今回の震災を受けて『今、神楽を創ろう』という動きが出てくるのは自然なこと」「民衆の誰もが親しみをもてる事を」「神楽には喜怒哀楽が全部入っている。だから見た人々に思いがけない効果を生む」「神楽の歴史はおおらかだ。地域の思いをつむぎ合わせて、いいものがあれば混ぜ合わせて創ってきたのだろう」などのお話も胸を熱くするものでした。

続きは、次の更新で。