展望
〈歴史・伝統〉をたずねて〈未来〉を創る。温故創新。そのためにはまず、福島古来からの伝統文化を知る必要がある、と私たちの心は向かった。震災後、福島各地の伝統芸能の保存・伝承があやぶまれている現在である。私たちは、まずこのことを福島の重要な文化が失われてしまう大いなる危機と受け止めている。懸田弘訓氏を代表とした民族芸能学会福島調査団の方々や、県北地方をはじめとする県内外の伝統芸能、伝統工芸に携わる方々などと連携をとりながら、現状を深く知りたいと考えている。そして伝統芸能をこれからの福島の子どもたちに残すべく、私たちなりにしっかりと働きかけていきたい。
その上で私たちは、新しい伝統芸能の創出を試みたい。それを震災の経験を未来に残していく一つ一つの確かな象徴の礎として最初に考えていきたい。そしてその活動を中心としながら、福島から世界に向けて発信する文化のために必要な、今を伝える新しさとは何かに常に思いをめぐらせていきたい。ここで私たちは、文学・音楽・演劇・美術などの様々な表現形式を総合させた、福島発の文化を希求する大規模な活動の計画・展開を求めるに至る。
本年は、昨年に実施した「未来の祀りふくしま」の実施で得たことを記録・体系化し、それらを基にしてふくしまの人々との学び・出会いの場を新しく作り上げていきたい。
これを「学びの年」としたい。
「温故『創』新」の志を掲げ、子どもから大人まであらゆる世代が、様々な場において、地域に残る伝統芸能の共有、暮らしのありかた・生き方の共有、様々な新しい文化の場の創出の共有を通して、ふくしま発の文化の発信者・受容者・指導者・新しい担い手を育てる一年としたい。
企画趣旨
まちづくり人材育成事業【未来の祀りカフェ】は、まちづくりや文化の、担い手を増やすことを標榜しています。
そのために、「地域内外の民俗芸能などの文化資源」を、カフェに行くような、気楽で参加しやすい方法で紹介し、積極的にまちづくり事業に携わることの楽しさ・大切さを啓蒙していこうと考えました。
1. 地域伝承の文化資源を学ぶ事業
- ふくしまの伝統芸能の継承者や担い手を招き、民俗芸能学の専門家を交えて、その価値を再認識するとともに、伝承の方法、現在の課題についても学ぶ。
- 絹織物や染色、和紙をはじめとした県北地域の伝統工芸のこれまでと、現在行われている取り組みと可能性について、担い手や専門家を招いて、その価値を再認識するとともに、伝承の方法、現在の課題についても学ぶ。
- ふくしまの発展に貢献してきた有名無名の歴史上の人物について、その功績と、抱いていた故郷への思いについてを専門家に学び、地域が歩んできた歴史を学び、過去から未来へと想いをつなぎ故郷を創造することへの意欲を喚起する。
2. めざすふるさとの未来へのあこがれを抱く事業
- 日本の神楽の伝承が盛んな地域から(島根県出雲地方の石見神楽…東日本大震災をモチーフにした新作神楽もある。/ 宮崎県の高千穂神楽など)継承団体を招致し、神楽を披露いただくとともに、どのように発展・継承されてきたか、地域の伝統工芸がどのように生かされているか、神楽に関わる伝統文化が地域づくりにもたらしている良い効果についてなどを学ぶ。同時に、私たちの地域が持つ伝統文化を重ね合わせて考えることによって足元にあるものの良さを再認識し、地域全体で継承・発展させていくことへの意欲を喚起する。
- 主に「まつり」や文化を通じた街づくりに成功している先進的な事例の仕掛人や関係者を招き、担い手としての考え方やスキルアップの方策、目標となる道筋を具体的に学ぶ。
- 福島で、震災後からの福島を考える企画を実施したいという思いを持つ個人や団体と連携し、ふくしまから発信できる先鋭的なアートプログラム(音楽・現代アート・文学・心理学・震災後の課題や命をテーマとしたトークプログラムなど)を実施し ながら、実際に企画運営に携わり、ふくしまの文化発信の担い手としてのスキルを学ぶ。